愛知県立芸術大学

文化財保存修復研究所

調査部門

愛知県立芸術大学文化財保存修復研究所は、文化財を詳しく調査分析できるよう、様々な設備を整えています。

高精細デジタルカメラを使い、通常光撮影のほかに、可視光線よりも短い波長を利用した紫外線蛍光撮影、可視光線よりも長い波長を利用した赤外線撮影を行っています。またデジタルマイクロスコープを用いて、肉眼観察では捉えることができない詳細な観察を行っています。平成29年度に携行型蛍光X線装置も導入され、より充実した調査ができるようになりました。

こうした綿密な調査によって作品の損傷状態を把握するだけでなく、作品に用いられた技法や材料の考察も可能になり、より適切な処置を行うことができます。またこのような光学調査は非破壊で目には見えないような情報を得ることができ、その情報はデジタルデータとして記録され、今後の学術研究にも活かされます。

研究活動

研究所で受託する修復事業や修復研究の作品について、作業を進める前には状態調査が欠かせません。特に光学調査やX線調査では通常の視覚認証では掴めなかった情報を新たに引き出すことがあり、その後に続く修復作業の方針を左右する結果にもつながります。またこれまでに詳細な調査研究がなされなかった作品や材料に加え、近代以降に続々と開発された新たな顔料その他の新材料については、今後の現場での扱いに注意が必要なため、諸々の分析調査研究が必要不可欠な分野となっています。

教育活動

文化財調査には種々の機材を用い、それぞれの機材の調査結果にはある程度の「見方・読み方」の手法が必要です。そのため教員や学生など若手世代がやがては文化財修復の現場でこうした機材を活用できるよう、文化財調査手法講座を自主開催し、その技術を継承しています。

調査

通常光撮影

状態を記録するために通常光で撮影を行います。表面に均一な光を当て撮影する他にm斜めからの照明による撮影では、表面の凹凸の状態を明瞭に観察できます。裏面の撮影も行います。

赤外線撮影

絵具層より下層にある下素描の線が観察できることがあります。また、反射の具合から何の絵具が使われたか検討ができることがあります。

紫外線蛍光撮影

表面のワニス有無や、後世の加筆部分が見分けられます。また、蛍光反応により、何の絵具が用いられたのかが考察できます。

デジタルマイクロスコープの撮影

拡大して観察することで技法を読み解く大きな手がかりになります。この部分は白と赤を混ぜ切らない状態の筆で塗布し、この部分が乾いてから赤を上に重ねたということが推測できます。

携行型蛍光X線装置による分析

携行型蛍光X線装置により、非破壊で照射箇所の物質に含まれる元素を分析し、用いられた物質の推定することができます。