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卒業生インタビュー(3回目)-油画

小林孝亘さん 1986年 油画専攻卒業

「少しずつ段階を経て、アーティストはなっていくもの」

授業、クラブ活動、アルバイト。画家の小林孝亘(こばやし・たかのぶ)さんは、学生時代の一瞬一瞬を大事に過ごしたそうです。今回は、小林さんが卒業されて現在に至るまでについて、お話しいただきます。

oil-interview-03-01

・・・・学生時代に描いた絵や考え方は、大人になった今も影響がありますか?

小林「核になるものは変わってないです。卒業してから、もっともっと『絵画とは何か』を勉強しました。理論が先行してしまうと、理詰めの理のような絵になっていきました。そうなったときもう一度、描きたいものを立ちかえって考えました。そうすると学生時代に描いたような絵、学生時代からの延長線、だけれども考えはひと巡りして今がある、と思います」

・・・・技法や素材もですか。

小林「僕の場合は、技法や扱う素材にこだわりはないのです。例えばテンペラ画、学生時代に一通り習うので、その通りにしたこともあります。でも何かしっくりこない。結局、自分の感覚に素直に、自分なりに、絵を描いています。技法を学んで知ったから、自由になることができた。一通りやったから僕には合わなかった、とも言えますね」

・・・・コンセプトやモチーフはどうですか?

小林「学生時代から『光』を意識しているように、今とつながっている要素はあります。でも大学時代は『人物像』ばかり描いていたのが、逆に卒業してしばらく、まったく『人物像』を描かないということもありました」

oil-interview-03-02学生時代のデッサン

・・・・大学を卒業してからの小林さんは、どういう生活を送っていたのでしょうか。

小林「あんなに楽しかった学生時代でしたが、卒業してからは東京に引っ越し、アルバイトしながら絵の制作をするという日々で、真逆の生活でした」

・・・・《Class Room》を描かれていたころですね。

小林「《Class Room》は潜水艦をモチーフにしています。大学を卒業してから、制作時間はアルバイトに行く前と、帰って来てからでした。早起きはいいのですが、早く制作をしたくて、定時ちょうどにタイムカードを押して家に帰る、という生活。バイト先の人間関係も断ち切っていたので、僕は潜水艦にいるような気持ちで、このような絵を描いていたのです」

oil-interview-03-03《Class Room》
1993年 oil on cotton on panel 200cm × 200 cm 高橋コレクション

・・・・展覧会はなさっていたのですか。

小林「はい。大学を卒業してから3、4年後に、貸画廊を借りて個展をしました。仕事をしながら毎年個展をしていたら、他の画廊さんや美術館から声が掛かるようになりました。それと当時、まだ美術館に予算があったころだったので、美術館で発表するための補助金が出ていたのです。だから少しずつアルバイトを減らして制作に時間を割くこともできました」

・・・・小林さんが文化庁在外派遣制度でタイに行かれたのはそういった流れからですか。

小林「その前にVOCA展という平面作品の展覧会で賞をもらいました。その賞金をもとに制作に励んでいたら、文化庁在外派遣制度の話をいただいたのです」

・・・・そしてタイに住み、制作なさっていたのですね。

小林「タイに行ってからは、お金のことを心配しないで、絵の制作にしぼっていけるようになりました。段階を経ていった感じですね」

oil-interview-03-04《Sunbather 10》
2004年 oil on canvas 194 cm x 259 cm 大原美術館蔵

・・・・なぜタイだったのでしょう?

小林「浪人時代のときに旅行代理店でアルバイトをしていたことがありました。そのとき研修旅行でタイに行かせてもらったんです。たまたまだったし、初めて行った海外がタイだったのですが、僕はタイを気に入ってしまったんです」

・・・・アーティストを目指す人たちに一言お願いします。

小林「アーティストは、展覧会や作品制作の数をこなして、評価されていくものです。でも僕は、ほめられるとダメになるタイプです。続けられる環境をどうつくるか、ということが求められますね」

・・・・これからの小林さんの活動について教えてください。

小林「東京都内のギャラリーで、秋と来年春に個展を開きます。それと来年は、海外でのグループ展も予定しています」

・・・・どうもありがとうございました。

インタビュアー・藤田千彩(アートライター)
取材日 平成24年7月30日